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→やあみんな元気かい、おれがぽいうだ。こころはいつもオーバーヒート、じゃ放送をはじめる。
→じつはおれはいま、ねむたくてしょうがないんだ。きのうの夜、あまりよくねむれなかったからね。このまえの放送と話がちがうって? まあきいてくれ。
→きのう放送をおえてアパートにもどったら、ドアのところでジーナ・ロロブリージダ似の美人がまちかまえててね、「いまからあなたの願いをみっつだけかなえてあげるわ」っておれにむかってウィンクをした。それはたしかに悪くない申し出だ。だから、即座にみっつ願いをいったよ。「ひとつ、むこうをむいて、ふたつ、あるきだして、みっつ、そしてきえてくれ」ってね。なにしろラジオ局の仕事をしていると、いろいろとおかしな連中がやってくる。自制心をつねにもちつづけることがかんじんだ。ところが彼女はいたくプライドが傷ついたみたいで、なにしろロロブリージダだからね、傷ついたみたいで、「抱いてくれるまではここを動かないわ」ときた。やれやれ、ちかごろの女の子の貞操観念ときたら、いったいどうなっちゃったんだろうね?
→しかたがないんでおれは、そこをはなれて、駅前のドーナツショップへいった。そこで仮眠をとろうとおもったのさ。プレーンのドーナツをひとつと、コーヒーを注文して、席にこしをおろすと、こんどはキム・ベイシンガー似の美人がちかづいてきて「ねえ、いまからあなたの願いをみっつだけかなえてあげるわ」という。おい、どういうことだ、これ?
→そこではじめておれは、いまじぶんが夢をみているんだってことに気がついた。それから、まてよ、これが夢なら、夢のなかでなら、欲求を発散してもいいんじゃないかってかんがえた。たしかにラジオ局の仕事には、自制心がたいせつだ。でもね、夢のなかでまで自制心をたもつ必要があるのかどうかはむずかしいところだ。そうだろう? そこでおれはなやんだ。キム・ベイシンガーをまえにして、夢のあいだじゅうなやみつづけた。
→よくあさ目をさましてから、じぶんが、ぐったりつかれていることに気がついた。まったくねむった気もちがしないあさだった。となりでねていた女の子に「うんうんうなされてたけど、だいじょうぶ?」ってきかれたよ。それから、きのうの夜は、映画女優をかぞえながらねむりについたことをおもいだした。まったく、おかげでこのありさまだ。
→ねえ、夢のなかで考えごとをしてつかれてしまい、本番の仕事中にねむたくなっちゃったDJをきみはどうおもう? どうおもおうと、いまきみが聴いているこの番組のDJがそうだ。この話がそうだ。今夜もしばらく、ねごとにつきあってくれ。
→おしゃべりはねごとでも音楽は本物だ。こいつで目をさますことにする。ウィルソン・ピケットで、「ムスタング・サリー」。
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