|
これはあまりおおきな声ではいえないんだけど、彼女は、こと味覚にかんしてはなにがなんだかさっぱりわからない。ほかのことに関してもよくわからないが、とくに味覚に関してはさっぱりわからない。おれもたいがいのものは文句をいわずにたべるほうなんじゃないかとおもうけど、そのおれが喉につかえてのみこむのに苦労するような食べ物を「おいしいおいしい」といってたべる。たとえばおれは電子レンジであたためる冷凍食品一般がだめなんだけど、彼女は「けっこうおいしいじゃん」といいながらぱくぱく食べる。コンビニエンスストアで買ってきたカマボコなんかをあたえるともう大変で、うまいーっと叫んで、感動にからだをうちふるわせながら食べてる。いちどためしに、とてつもなくうまいものをあたえたらどうなるかとおもって、伊豆にある一泊十万円という旅館に泊まってみたことがあるんだけど、そこの夕飯のさしみや焼魚などにも、やっぱり「うまいーっ」と叫んで、からだをふるわせるだけだった。こっちとしては、美味のあまり卒倒のひとつもするかと期待してたんだけど、そういうことはなくて、ようするに、コンビニのカマボコと反応はかわらないということがわかったので、それいらい彼女には高級なものをあたえないようにしています。
|