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おれはネマキを着るということがまずない。すっぱだかで寝る。起きてもそのまま、新聞の集金人でもこないかぎりはすっぱだかですごす。という話を女の子にしたら、ひどい顔をされた。「パジャマくらい着れば? パジャマはねえ、着替える必要がないのよ。それを着たまま家のなかをあるけるのよ」と彼女はいう。「すっぱだかで家のなかをあるいちゃいけないの?」とおれがきくと、彼女はあきれて、そこからさきはなにもいわなかった。
そのように断固すっぱだかでとおしてきたおれだが、なん年かまえに引っ越しをして事情がかわってしまった。いぜんはタンボのなかの家で、オトナリというものがなかったのだけれど、こんどはそれがある。スギヤマさんである。隣近所ができた当初はおれもめずらしがって無邪気によろこんでいたのだけど、しかしこれはこれで一長一短がある。おれみたいにすっぱだかですごしてると、なにかと不都合なのだ。たとえば去年の夏はとくに暑くて、いよいよめったに衣類というものを着用しないうえさらに家の窓がそこらじゅうあけはなしてあるから、変態スッパダカ男がうろうろする図が隣近所からまるみえということになってしまう。そうなるとうかつに顔を洗いにもいけない。たとえばすっぽんぽんのままで歯をみがいてるさいちゅうに、洗濯ものを干してるスギヤマさんの奥さんと目があってしまうなどというのは、かなりバツがわるいものがある。ええとスギヤマさんの奥さん、なんどもおどろかしてしまってすみません。こんなこと、めんとむかって謝りづらいので、インターネットのこの場を借りて全世界にむけて謝ります。ながねんの習慣なのでおれもつい油断してしまうことがあるわけですが、すくなくとも努力はしているつもりです。たぶん時間がたつにつれ衣服を着用してる時間もふえるとおもいますので、もうしばらくあたたかい目でわたしのラタイをみまもってください。
というわけで彼女が正しかったことにやっと気づいたおれだ。パジャマの良いところは、着替える必要のないことだ。それを着たまま家のなかをあるけるところなのだ。今夜もパジャマで寝るのだ。
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