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と、こうなる。じゃ話します。こほん。むかしむかし、あるところに高校生の男の子と女の子がおりました。あるところというのは広島県です。そこに男の子と女の子がおりました。彼および彼女は高校生にありがちな男女交際、すなわちSM道具を用意してホテルへいってみたりだとか、両親のルスをいいことに家に相手を呼んで48時間耐久性交に挑戦してみたりだとか、そういう男女交際を展開しておったわけですが、あいやじつをいうとこれはわたしの空想ですが、でも高校生というのがいちばんそういう性交に興味をもって挑戦しそうなのできっとそういうことをしてたにちがいないとわたしはふんどるわけですが、さて、そのような交際をへたのちふたりは大学生となり、彼は広島の大学へ、彼女は千葉の大学へと進学しました。一般的にいうとここでしばらくすぎたのち女の子に新しいオトコができて、女の子は「あなたのことはわすれないわ」、男の子は「けっうるせえオンナなんかなんだバーロー」といってサヨナラすることになってるんだけど、なぜかこのふたりはまる2年すぎたのちもまだどうにかうまくやっていました。これはひとえに男の子のほうがマメであったからにほかならないとわたしはおもうのですが、といいますのもこの広島くん、ほとんど毎週のように千葉の彼女のもとへかよっていたのです。まだトシハもゆかぬころからはじめた貯金が100万円ほどあったそうで、これをつかいつつ、またアルバイトにも日々はげみ、彼女のもとへかよっていたのです。ところがっ。二年がすぎて、彼女にとうとう、あたらしいオトコができかけました。現地のオトコです。これを千葉くんということにしますが、これは大学の同級生です。あんまりありがちな話なのでもうしわけないんですが、そういうわけで必然的に彼女はフタマタ女とあいなりました。週に二日ははるばる新幹線でやってきた広島くんとよろしくやり、のこりの五日は現地千葉くんとよろしくやっとる日々だったのですが、そのような事情はけっきょくは広島くん千葉くんの両名にしられることとなりました。わたしときどきおもうのですが、地球上には三種類の人間しかいないです。ひとつめは色情男です。ふたつめは色情女です。みっつめは、わたしです。誠実と中庸のひと、このぽいうです。じんるいはすべて、この三種類に分類されるようにおもうのですが、いかかですか。んな話はさておいて、彼女はもちろん、どちらのオトコを選ぶのか、態度をハッキリさせねばならんことになりました。そして彼女は広島くんを選びました。千葉くんにそのことをつげると、とうぜん千葉くんは「けっオンナなんてなんだバーロー」となりました。そんなふうに千葉くんはすさんでました。ところが彼女は広島くんを選んだのちもやることはやっていたようで、というのは、それから広島くんがまた彼女のアパートにやってきて、彼女がでかけてるあいだに、気をきかせて部屋の掃除をやりました。そこで、ゴミ袋から使用済みのコンドームを発見してしまいました。広島くんには身におぼえのないコンドームだったそうです。とうぜん広島くんもまた「オンナなんてなんだバーロー」状態となりました。以上がおおまかなまえおきです。ながくてすまん。まえおきです。話はここからです。さて。彼女の大学のクラスメートがニュージーランドだかニューギニアだかに留学することになりまして、おわかれパーティーが水曜日の晩にもよおされました。友人のアパートにてもよおされました。フタマタさんは、たまたまきていた広島くんとともにかけつけました。ところが留学さんは千葉くんにとってもクラスメートであったため、彼もまたその場にかけてつけてしまったのでした。かくしてとうとう、広島くんと千葉くんのご対面ははたされました。その場にいあわせた事情をしる者どもは、みなびびってしまいました。わたしもそこにいました。このぽいうもその場に存在してしまいました。おっかなかったです。傷心の千葉くんはすねたそぶりで部屋のかたすみにへたりこんでいます。アルコールのまわってきた皆の衆がどっとよろこぶたんびに「へっ」だか「けっ」だかいう声をもらし、ハナでわらったりしています。なにやらじんせい虚無的になってるのがありありとわかる。こなた広島くん、千葉くんと対角線上の部屋のかたすみにじんどり、こちらは皆の衆とともにたのしくかたらっておるのですが、あっ、こいつ、あきらかに千葉くんを意識してるっ。ぜったいに視線をあわせようとしないい。あたりには、一触即発の空気がびんびんにただよっています。緊張のあまり、一晩すごしただけで百年ぶんの夜をすごしてしまうかのようです。なんの罪もないみなさんまでその空気にヤラれて弱ってるみたいです。なんとかしなければ。わたしおもいました。みなさんごぞんじのとおり、わたしじんるい愛のひとです。みんな仲よくせにゃいかん、仲よきことは美しきカナのひとです。カメの甲よりトシの甲、わたしかんがえました。思案しました。思案するわたしのかたわらに、あっ、これはなんとありがたくもなつかしいニ〜ンテンド〜、マリオカ〜トっ。これで仲よくゲームをすればじんるいみな兄弟になれるにちがいないっ、すでにキミたちは兄弟かもしれないけど、もっとちゃんとした兄弟になれるかもしれないっ。そうかんがえてわたし、さっそく広島くんに「キミキミこれで遊んでみんかね」とすすめてみました。広島くん、これがなかなか気さくな好青年で「はっ、やらしていただきますっ、シテこれはどのように遊ぶですかっ」とわたしにたずねてきます。なんだかやる気まんまんです。わたしさっそく操作を教えました。広島くん、キキとしてタイムアタックに挑戦しはじめました。サル化しとるです。うんうんよかったよかった、わたし、うなずいたのですが、そこで視線を千葉のほうにむけてみると、あっ、フテくされてるうっ。千葉くん、フテくされていますっ。ナニごとも機会均等民族自決を標榜するわたし、これはのぞむべき状態ではありません。広島くんがひといきついたのをみはからって、千葉くんにもすすめてみました。キミ、このゲーム、やってみんかね? 千葉くん、のぞむのところであったようで、ジョイパッドを手に、これまたサル化してしまいました。とりつかれたようにゲームにのめりこんでるのでした。いったいなにが彼をそこまでかりたてたのか、それはよくわかりません。そして、さきほど広島くんがだした最高タイムをうちやぶったところで、千葉くんは「フ」とハナでわらってパッドをおきました。そのハナわらいをみのがさなかったのは広島くんでした。すかさずそのパッドをひったくり、ゲームに挑戦しはじめました。こんどはキキとしてというよりも、なんだかキキせまるドライビングでした。これがまたおそろしいドライビングでした。わたしもながくゲームをやってきましたが、あすこまでゲームに熱中しとるひとはみたことがありません。神の領域までもつきぬけて、彼岸の彼方で孤高の十字キー操作をしてるかのようでした。そして千葉くんのタイムをやぶりました。千葉くんの顔色がかわったのはそのときでした。わたし、みました。たしかに顔色がかわりました。「顔色がかわる」というのは、ただの比喩かとわたしおもってましたが、ほんとうに人間の顔色がいっしゅんにしてかわるのだということをわたし、はじめてしりました。顔色をかえてジョイパッドを手にした千葉くんが、こんどはゲームに没頭するばんでした。もうだれも、おしゃべりをするひとはいませんでした。なんだか事態は収拾のつかない方向へまっしぐらにつきすすんでいる。テレビ画面にうつしだされてる道は、ほろびにむかってまっすぐにつながっている。その場にいあわせた皆の衆は、そういうおもいにかられ、かたずをのんで、ゲームの画面をみつめるだけでした。なんとかせねば。わたしおもいました。なんとかせねば。なんでそんなに真剣になるんだ。たかがゲームじゃないか。そうだろう? そうかんがえて、それでためしに、パッドをあやつる千葉くんにこうささやいてみました。「もっと気らくにゲームやろうよ。べつに女を賭けてるわけじゃないんだからさ」ずるるるるっ。トタンにクルマはコースをはずれて道なき道につっこんでいってしまいました。い、いたいほど動揺があらわてるうっ。なんだか効果テキメンっ。「こ、これはおもしろい」ザンゲします。わたし、そうおもってしまいました。それでわたし、さらにこういってしまいました。「いっそ女を賭けてタイムアタックする?」ずりょりょりょりょりょおおっ。またクルマはコースをはずれてあさってのほうをかけずっていってしまいました。「だったらおれも参加させてよ」ダメおしにいうと、台所のほうでガチャガチャ〜〜ンっ、という音がきこえてきました。なにやら食料の用意をしとった女の子がそれをひっくりかえしてしまったようでした。だれかはしりませんが。
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