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おはよう。
さくやはカニを食べにいこうと話になっていたのだが、直前になってながれてしまい、おとなしくひとりでラーメンをくって八時ごろに家にかえると、あきれたことにそのままねむってしまった。部屋のデンキもつけたまま、テレビもつけたまま、服もきたままねむりこけ、はっと目をさましたら四時半だった。こういうときこまるのは「これは明け方の四時なのだろうか、夕方の四時なのだろうか」ととっさにわからないことだ。叶姉妹のどっちが姉でどっちが妹なのか区別がつかないのと一緒だ。とりあえずテレビは映画をやっていて、拷問シーンなので、たぶんこれは明け方のほうなのだろうと推察して、風呂にはいる。ばかげた時間にねむりにつくと、ばかげた時間に目をさましてしまうのだなあとあらためておもう。ばかげた一週間だった。ばかげた一ヶ月だった。ばかげた半年で、ばかげた三十八年間だった。きょうから七月、いずれにしてもじんせいはつづく。
ぜんぜん話はちがうけど、カニがすきなひとというのはけっこういて、カニカニカニカニいってくらしてるひとというのはけっこういて、その気もちはよくわからない。あんまりおれはカニというのは食べる気がしない。もちろんきらいではない。でもすきでもない。積極的にたべようという気がしない。なにしろカニというのは横に歩くのだ。横だよ、横。ばかげてる。おれのじんせいもばかげてるけど、あれよりはましだ。だって、横だよ、横。なんでそんなものをみんなくいたがる? おれにはわからない。あんなものは、柿でもぶつけて気絶さしときゃいいのだ。‥‥というのはいまつくった、とってつけた理由で、ほんとうは、カラをむくのがいやなのだ。めんどくさいから。その証拠に、となりでカラをむいてくれるひとがいたら、いくらだってたべられる。ううむ、われながらにんげんとしてまちがっていることにまたひとつ気づいてしまった七月一日朝六時。まちがったままじんせいはつづく。
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