とり  『正直ナヤミ相談室』


 むかしむかし、おれにも中学生だったことはあって、放課後の教室のすみにころがっていた中学生むけの雑誌の、読者からの悩み相談コーナーのページをながめていると、こんな相談にでくわした。

相談:十四歳男子です。最近僕は変なんです。クラスメートの女子たちの胸やおしりのあたりが気にかかって、授業中なんかも、そっちのほうにばかり目がいってしまうんです。もちろん家にいるときもそんなことばかり考えてしまって、勉強も手につきません。僕は病気なんでしょうか。

 ちょうどおなじ悩みをかかえていた中学生だったおれは、興味ぶかくその回答をよんだ。

回答:病気ではありません。それは思春期の男子が大人になる過程で、誰もが経験することなのです。ただ、そのせいで勉強がおろそかになってしまうのは考えものですね。スポーツで思いきり汗を流して、発散させましょう。

 この回答には、どんなにすくわれたおもいがしたことだろう。おれは病気じゃない。病気じゃなかったんだ。雑誌のページを頭のうえにかざしてそうさけびながら、その場でおどりはじめたい気ぶんだった。
 けれど、いまになってシミジミとかんがえてみると、どうも「だまされた」という気がしてならない。「だましてる」とまではいえないかもしれないが、すくなくとも、「ごまかしてる」とおもう。それも、肝心なところをごまかしてる。これだけポルノグラフィーがはんらんしてる1999年の日本で、こんな素朴な悩みをかかえてる中学生の男の子がまだいるかどうかはちょっと疑問だけれど、もしもおれがかれらからこれとおなじ悩みをうちあけられたなら、こういう、その場しのぎみたいないいかげんな回答はせずに、肝心なところをごまかしたりせずに、正直に、こうこたえてあげたいとおもう。

回答:病気です。いつなおるのか、わたしにもまったく見当がつきません。なにしろ、わたしもいまだにおなじ病気でなやんでいるまっさいちゅうなのですから。きっと、九十五歳くらいになればすこしはおさまるのではないかとおもいます。そう信じて、おたがいがんばりましょう。

[24,11,1999]