とり  クール

 『帽子を妻とまちがえた男』とかいう本があったけど、おれもときどきそういうまちがいをする。さすがに帽子と妻をまちがえたりはしないけど(だいたい妻がいない)、冷蔵庫と洗濯機をいいまちがえてしまう。なんでなのかよくわからない。あと、ナイフをフォークといってしまうのもよくある。あと、ガールフレンドの名まえをまちがえたりするとおもしろいんだけど、いちおうそれはない。とおもう。
 それで、冷蔵庫と洗濯機の話なんだけど、冷蔵庫はちゃんと冷蔵庫とよんでいるのだが、洗濯機を冷蔵庫といってしまう。これはきいたひとにけっこう衝撃をあたえるみたいである。つかいおえたタオルをまるめながら「これ、冷蔵庫にいれとこう」とつぶやいてしまう。きいたほうは目をまるくして、
「どうして?」とくる。
「どうしてって、あらうからだろ」
「冷蔵庫でどうやってあらうの?」
と、そこまできて、おれもやっと気がつく。
 親しいともだちや家族なんかはもうこのことをおぼえていて、洗濯機のことだとわかってくれるんだけど、そうでもない客がきているまえでこれをやると、たいていおどろかれる。衣類をだれかにわたしながら「冷蔵庫にいれといて」というと、わたされたほうは平然とそれをうけとってどこかへいってしまう。客はあっけにとられている。そのようすでおれも、ああ、またまちがえたかと気づくんだけど、そういうときはあわてずさわがず「冷蔵庫でひやしたパンツをはくと気もちいいんだよ」といってみる。客はますますおどろく。そんなせいもあるのかどうか、おれは仲間うちでは、いがいとクールなやつということでとおっている。ような気がする。

[05,12,1999]