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ぐりちゃんはいぜんバンドをいっしょにやっていた女の子なんだけど、クリスマスのちかづいたある晩、彼女が部屋ですごしていると、階下の居間にいたおとうさんによばれたのだそうだ。なんだろうと階段をおりて居間にいってみると、カーネル・サンダースのようなほほえみをうかべたおとうさんがいて、テーブルのうえをしめしている。そこにはいろとりどりの腕時計がずらりとならべられ「クリスマスプレゼントだよ、どれでも気にいった時計をえらびなさい」という。夢のような話だ。
「うわあ」彼女は声をあげ、おおよろこびで時計のそばへかけよろうとしたそのとき、ところが、おとうさんがならべられた時計にフーっと息をふきかけると、時計はすべてヒラヒラと舞いあがってしまった。おとうさんの肺活量がひとなみはずれたものだった、というわけではなくて、じつは時計はすべて紙だったのだ。ほら、よく雑誌の広告のページに腕時計が印刷されてるでしょう? ヒマをもてあましていたおとうさんは、それをハサミでしこしこと切りとって、テーブルのうえにきれいにならべといたわけです。ボーゼンとたちつくす彼女の肩に時計がふわふわとふりつもる。
「いやあ、あのときはガッカリしたよう」と、ちっともガッカリしてないような口調で話すぐりちゃんをながめながら、おれはアタマがクラクラした。なんていうか、世の中にはいろいろなご家庭がある。おれなんかには想像もつかないような、強烈なご家庭がある。
それはともかく、メリークリスマス(なんか、こればかりいってるな)。それから、ハッピー・ニューイヤー。みなさんに幸福な一年がきますように。
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