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「あの閻魔堂の中にかくれて待っていてくれ、俺が石松をうまくだまして連れて行く、ここまで行ったらお前が飛び出して名乗りをかけて石松に斬ってかかる、決して逃げねえ、きゃつは強いから、さあ来いと言ってお前っち相手に斬り合う、あんまり長くやってると、言っちゃ悪いがお前っちはやられてしまう、で、俺達七人が石松の後ろにまわって石さん、何だその野郎は、俺は助太刀するぜって、こう言って油断さしておいていきなり石松の後ろから‥‥」 |
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二代広沢虎造「閻魔堂の欺し討ち」 |
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| ヒ | ちぉとあんたどういうつもりなの。 |
| 栗 | どういうってなんのこと。 |
| ヒ | いまさらしらばっくれんじぁないよ。あんた、備中になにしたんだよっ。 |
| 栗 | なにって、なんにもしてないよ。 |
| ヒ | しらばっくれんじぁないっていってんだろっ。備中をみてみなっ。 |
| 備 | じー。(コップをみつめとるおと) |
| ヒ | あんたがなにしたんだかしらないけど、備中がこんなんなっちぁったのは、あんたのせいなんだかんね、きぉうだって、ここまでつれてくんのタイヘンだったんだかんね、それもこれも、みいんなあんたのせいなんだかんねっ。 |
| 栗 | んな、おれはなんにもしてないって。ただ、備中の家に遊びにいって、それですぐかえってきただけだって。ね、なんにもしてないよね? おれのせいなんかじぁないよね、備中? |
| 備 | じー。 |
| 沖 | うぷっ。 |
| ヒ | とぼけるなってんだろっ。おまけにおまえは備中のとこで備中にひどいことしたあと、その足でモラシタの家にいって、モラシタともやっちぁったっていうじぁないか。 |
| 沖 | ぷひっ。 |
| 栗 | へ? な、なんでそんなことまで‥。 |
| ヒ | ケージのムスメをあまくみんじぁないっ。調べはついてんだよっ。あたしたちはねえ、みいんな高校の同級生なんだよ、同級生。 |
| 栗 | へ? |
| ヒ | どー、きぅー、せー。きのうそんときの同窓会があって、モラシタにひさしぶりにあって話してみたら、なんだあ? すいど橋の予備校にかよってるう? イバラギからきてるくりたってのとつきあってるう? こないだチバの家までヤリにきたあ? ちぉっとまってよ、そのくりたつうのはあたしが備中に紹介したあの男のことじぁないかよっ。 |
| 栗 | いや、あのね、その件についてはね、あの、備中の家をおいとましたあと、な〜んかこのマチナミってしってんだよなあってかんがえて、そしたらおもいだしたのね、ああそうだ、ここはモリシタさんちがあるまちじぁないかって。そんでね、せっかくはるばるチバまできたんだし、ついでだからよってみようかなあと遊びにいったら家にいたからね、そんで、じぁちぉっとお邪魔しようかなあと、ええとね、ええと、おれはね、ただこう、みんなとなかよくしようと‥‥(^^)。 |
| ヒ | へらへらすんなあっ。 |
| 栗 | ひっ。 |
| 沖 | くひっ。 |
| ヒ | あんたねえ、ほんとにったく、どういうつもりなのよ、備中はねえ、とくべつなんだよ、ほかの子とはちがうんだよこの子は、あんたねえ、よくもよくもうらぎってくれたね、備中はもう傷ついてるなんてもんじぁないんだかんね、この責任はどうするつもりっ。どうしてくれんだよっ。 |
| 栗 | せせ責任ったっておれはそんなつもりは‥。 |
| ヒ | なかったってのそんですむとおもってんのそんでとおるとおもってんのっ。なめんじぁないよっ。だいたいあんたはねえあたしにも好きだとかいったことあったよねえ、それについさっき沖山くんからきいたけどこないだまでちぉっかいだしてたあの子もあんたにひどいことされて予備校こなくなっちぁったそうじぁないの、ほら、なまえなんつったっけ? |
| 沖 | 白都さんです。ハイ。 |
| 栗 | てっ、てめえ‥。 |
| ヒ | オラオラひとのせいにすんじぁない、ぜんぶあんたがわるいんだかんねあんたが。あんたのその見境のなさがぜ〜んぶわるいんだっ。 |
| 栗 | んな、あのね、おみせのなかで大声だすとほら、みんなみてるしね、予備校のクラスのひととかもほら、あそこにもいるし、あそこにもいるし、なんかみんなこっちみてるみたいだし、あの、もうちぉっと冷静に‥(^^)。 |
| ヒ | へらへらすんなああっ。 |
| 栗 | ひいっ。 |
| 沖 | あぐふうっっ。 |
| ホ | プカー。ちぉっとちぉっとお、ほんとにもうすこし冷静になんなよお。 |
| ヒ | くちだししないでくんない。あたしはこの男と話してんだから。 |
| ホ | そうはいかないよ、あたしだって関係あるんだから、プカー。 |
| ヒ | だったらあたしの話がすんでからにして。 |
| ホ | 話ったってさっきからこのひとをおどしてるだけじぁない。 |
| ヒ | おどしてなんかないよ。 |
| ホ | おどしてるよ。だいたいあんたさあ、くりたくんのこと、なんか誤解してない? |
| 栗 | そそそそそ、そーそー、誤解してる誤解してる。 |
| ヒ | あんたはだまってなさいっっ。 |
| ホ | |
| 栗 | ‥‥ハイ。 |
| ホ | そんなねえ、いまさらそんな話をしてみたってこの男にはなんのことだかわかるわけないって。そういうやつなんだからこいつは。そんなことは承知のうえであたしはくりたくんとつきあってるんだから、いまさらあんたなんかに横からごちぁごちぁいわれたくないわよ。 |
| ヒ | なんだってええっ。 |
| ホ | だいたいあんたはなんなのよ。くりたくんとなんの関係があるわけ。あたしたちには受験があるんだから、あんたみたいにヒマじぁないんだから、ヘンなことでよびださないでよ。 |
| ヒ | な、なんだってえええええっ。 |
| 沖 | (す、すげえ。ヒロポンに勝ってる‥) |
| 栗 | |
| ホ | おまえなんかのでるまくじぁないっていってるんだよプカプカー。 |
| ヒ | ふっ、ふざけんなあっ。 |
| ホ | やめてよ大声ださないでよみっともない。 |
| ヒ | あたしがだれのためにここにきてるとおもってんの。あんたたちのためじぁないのっ。みいんなあんたたちのためじぁないのっ。 |
| ホ | だ〜か〜ら〜、それが余計なおせわなんだっていってるでしぉ。だいじな話だっていうからきてみれば、ふっ。ばっからしい。ほっといてくんない? プカハ〜。 |
| ヒ | そっ、そうはいかないよ、あたしは備中の保護者なんだから。備中をこの男に紹介したのはあたしなんだ、だからなにがなんでもあたしはこの男に‥。 |
| ホ | へっ。いいとししてなにが保護者だよ。そういえばこの子はむかしっからひとりじぁなあんもできない子だったのよ、勉強だけはやたらできたけど。小学校から一緒だからよくしってんだよ。たしかにこの子にも問題あるけど、だからってまわりにいる人間があれこれ面倒みすぎるからますますこういう性格になってっちぁうのよ。すこしほったらかしにして、じぶんのことはじぶんでやらせりぁいいのよ。 |
| ヒ | あ、あんたなんかにいわれなくたって、そんなことはわかってんだよっ。 |
| ホ | じぁもうほっとこうよ。かえろうよ。 |
| ヒ | ちいっきしぉー、あったまくんなこの女ー。ビッチュっ。あんたこんなこといわれてハラたたないのっ。コップばかりみてないでなんかいいかえしなよっ。 |
| 備 | うにょ。 |
| ヒ | なに、なんだって? もっとハッキリいいなっ。 |
| 備 | 死ぬ。 |
| 沖 | んぱふうっ。 |
| ヒ | 死死死死死死死ぬって、あんたそんな大胆な‥。 |
| 備 | 死ぬの。 |
| 沖 | うぷぷぷぷ。 |
| ヒ | ちぉっと備中あんたねえこんなつまんないおとこにだまされたくらいのことでねえ死ぬなんてねえそんなバカなことくちばしっちぁダメだよっ。 |
| 備 | じー。 |
| 栗 | ぎく。 |
| 備 | じー。 |
| 栗 | そっ、そんな目でおれをみないで。 |
| 備 | じー。 |
| 栗 | あがががががが。 |
| 沖 | うぷぷぷぷぷぷ。 |
| ヒ | ちぉっ。ビッチュウウウっ。 |
| ホ | あら、死にたいってんだから死なしてやればあ。死なしてやりなよ。死ね死ね。 |
| ヒ | あっ、あんたねえ、ひとごとだとおもって無責任なこといってっけどねえ、備中ならやりかねないんだよっ。 |
| ホ | でっきるわけないじぁん、こんないくじなしにい。 |
| ヒ | なんだってえっ? |
| ホ | なんだよ。やんのかよオラ。 |
| ヒ | ぎー。 |
| ホ | ぎー。 |
| 備 | じー。 |
| 栗 | ちぉちぉちぉちぉとまちなよみんな落ち着けって。 |
| ヒ | あんたはだまってなさいっっ。 |
| ホ | |
| 栗 | ‥‥ハイ。 |
| ヒ | ぎー。 |
| ホ | ぎー。 |
| 備 | じー。 |
| 栗 | ‥‥‥‥。 |
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| [11,05,2000] |
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