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十二月、もうすぐ入試だってのにおれは予備校へもいかずまいにち天井をながめてすごしてた。
じぶんの内面にしっかりとむきあって思索にふける日々をすごしてた。
つうのはもちろんうそで、毎年いちどくらいずつあるフテクサレ病が発病して、なんだかなんにもやる気がおきないし、それいぜんそもそもこれといってとくべつすることもないし、それでけっきぉくイバラギの家でたらーと天井をながめてくらしてたんだ。
そんなある日、天井観察に飽きたおれが沖山のアパートをたずねたところからこのながい話ははじまる。
♂
「ようひさしぶりだな。ずいぶん寒くなってきたな」
「よう、よくきたな、はいれよ」
「っかしいつきてもボロいねここは。どうだあいかわらず幽霊はでてんのか」
「へっ。はいかわらずさ。ところでおまえちかごろなにしてたんだ。さっぱり予備校に顔ださないけど」
「いけるわけないだろあんなクソ予備校」
「へっへっへっへっへっへ」
「しってるかおまえすいど橋をながれてる川ってのはな利根川みたいに水がながれてるんじぁねえんだぞ」
「へっへっへっへっへっへ」
「精液がながれてんだぞ精液がだからおまえあのまちで水道をひねるとなあ、リンゴジュースみたいな精液がこう、どろーっと」
「へっへっへっへっへっへ、まおまえもひでーメにあったよなは」
「けっ」
「そーそーヒロポンがさは」
「あのブスがどうした」
「おまえは去勢したほうがひいってさ、へっへっへ」
「じぁ切り取ったチンポコはヒロポンの鼻に縫いつけてやるよってつたえといてくれ」
「へっへっへっへっへっへ」
「わらってろよこのやろう」
「まそう怒るなって、また女紹介してやるから」
「じぉだんじぁねえぞてめえがめっけてくる女にぁろくなんがいねえじぁねえかこのやろう」
「へっへっへっへっへっへ」
「とにかくおれはもう女なんかに興味ないからおれはもうこれからは受験勉強に専念するから」
「へっへっへっへ」
「ところでおまえ、そのしぁべりかたはどうしたんだ?」
「む」
「その気がぬけたようなしぁべりかただよ」
「じつはいまハラにチカラがはいんなくってさは」
「なんでまた」
「三日もゲリがとまんなくってさは」
「すいど橋でくさった精液でものんだか」
「へっへっへ、しつこいねおまえも、んなはずないだろ」
「じぁどうしたってんだよ」
「すこしながいぞ」
「話せよ」
「先週の土曜に予備校いくときさ」
「予備校っていうときはそのまえにクソってつけてくれ」
「クソ予備校にいくのに地下鉄のったらさ、目のまえにヨッパライがいたんだよ」
「だってあさだろ」
「あさだけどヨッパライがいたんだよ、ちう年のヨッパライが。でなにをおもったのかそのヨッパライがおれに話しかけてきたんだよ酒くさい息で」
「なんて」
「よおにいちぁんいい顔してんな女にもてんだろチンポコはマックロかってさ」
「なんだそりぁ」
「おれだってしらねえよ。も、べえろんべろんでさは」
「うん。そんで?」
「そんでいきなりおれのコカンに手をのばしてきて、おれのチンポコをぎぅーとワシヅカミにしやがってひょ、もうほんとモロにこう、ぎぅーと」
「なにい、だっておまえそれ、電車んなかだろ」
「いきなりだったからおれもたまげちぁってボーゼンとしちぁったんだけど、すぐに怒りがこみあげてきてさ」
「こみあげてどうした」
「なぐった」
「おもいきりか」
「おもいっきり。ヨッパライは電車の床にダイノジになってノビちぁった」
「そいつはあさっぱらから楽しかったな」
「楽しくなんかねへよ。おれのうけたセイシン的ダメージつうもんをかんがえてくれよ」
「そのダメージでゲリしちぁったの? わりとセンサイなんだねおまえも」
「んなことでゲリするかよ」
「まだ先があるのか」
「ひでーメにあっちぁったなもうとかおもいながら予備校に」
「クソ」
「クソ予備校にいったら、インシュにいこうとかクラスのやつらにさそわれてさ」
「インシュだあ? ったく受験てものをなんだとおもってんだよいまどんな時期かわかってんのかよあのクソ予備校の連中は」
「よくそふいふことがいえるなは」
「緊張感つうものがなさすぎなんだよあのクソったれ予備校のクソどもはよ」
「あいあい、まあそんでそのクソどもと居酒屋いったわけ」
「どこの」
「歌舞伎町。けどおれのチンポコにはまだヨッパライににぎられたときの感触がのこってて、ちきしぉうめとかほもいながらガバガバ飲み食いしてたら」
「ゲリしちまったわけだ。なさけない」
「んなことでゲリなんかするかよ」
「なんだよまだ先があんのかよ」
「そしたらそのうちわけのわかんない女が話しかけてきたんだ」
「チンポコはまっくろかってか」
「ばかやろう、ちぁかすなよおれは傷ついてんだから」
「へらへら。んで、どんな女なんだよ」
「あのへんのフーゾクの女でさ。ミクラスみたいな化粧で、ほまけにその居酒屋の常連みたいで、そこらじうの店員とか客とかみんな顔みしりみたいで、ぜんいんにアイソふりまいてて」
「だけどけっきぉくやっちぁったんだろ?」
「む」
「おまえもいいかげん自粛しろよなあもうすぐ受験なんだぜえおれたちは受験生なんだぜえおれたちは」
「まあきけよ。おれもそのつもりでここに連れてきたんだけどさ、そのときになってもさあ、この、なんつうか、つまりだな、その‥」
「なんだよどうしたんだよ」
「タタないんだ」
「へ?」
「タタないんだよ」
「ぐっ」
「きっとあのヨッパライのせいなんだよ、あのヨッパライににぎられたショックでおれのデリケエトな♂がタタなくなっちぁったんだよ」
「ぐぷぷぷぷっ」
「かなしいだろ」
「ぷはははははははははは」
「おまえはそうやってわらうけどね、おれにとったら切実なんだよほんと。女のほうはもうその気になっちぁってるから必死んなってタタせようとすんだけど、ぜんぜんだめでさは。そのうちあきれちぁっておれのチンポコみてせせらわらってるし」
「ぐはっはっはっはっはっは」
「なさけなさのあまりおれはナミダがこぼれそうだった」
「はっはっはっはっはっは」
「わらいごとじぁないんだって」
「はっはっはっはっはっは」
「わらうなっつってんだろ」
「す、すまん、そ、そんで、そんでどうしてゲリになっちぁうんだ?」
「ほらおれってやっぱり責任感がつよいから、タタないもんはしぉうがないからもうはきらめて、しぉうがないからなめてやったりしたわけ。このままかえしたら女がかわいそうかなとおもって、なめてやったわけ。こう、いぬみたくね、ぺろぺろとね、ぺろぺろぺろ」
「ぐぶっ。うぷぷぷっ、そっ、そしたらゲリが、とっ、とまんなくなっちぁったわけ?」
「うん」
「はーっはっはっはっはっは」
「おまえよくわらえるねこんな深刻な話」
「くわーはっはっはっはっは」
「おれの身にもなってみろつうの」
「はっはっはっは。わりいわりい。しかしこんな心が洗われるような話をきくのはおれもひさしぶりでさ。はっはっは」
「ひとごとだとおもってけらけらわらい転げやがってちくひぉう。まいいやそういう事情だからさ」
「なんだよ」
「かね貸せ」
「なに?」
「おかね貸して」
「ちぉと待てよどうしてかねなんか」
「だからそういう事情でかねがいるんだよ」
「だからどういう事情でかねがいるんだよ」
「わかんないやつだねおまえも。おれはけっきぉくその女にわらわれたまんまなの。インポだとおもわれたまんまなの。これじぁはんましおれがかわいそすぎるでしぉ? おれのチンポコがかわいそすぎるでしぉ? あまくみられたままなんて、おれのチンポコのプライドが許さないわけ。がまんなんないわけ。だからおれはもういちどあの女を連れこんでこんどこそ汚名をすすごうとほもってんだけど」
「さきだつものがないと」
「らいげつのあたまにはかならずかえすからさは」
「いくら」
「三千円ぽっきり」
「それっぽっちもないのかよなさけねえなあ。ほれ」
「おーっ、はりがとっはりがとっ、はりがとーっ」
「店はどこだかしってんの」
「もちろんだよ、名刺もらっといた」
「おまえどうでもいいけど勉強はやってんの」
「んなことよりこっちのほうが先だよ。勉強なんかこのままじぁ手につかないよ。じぁそゆわけでおれはいまからカブキチョいくけど、おまえもくる?」
「いまからあ?」
「ぜんはいそげっていうだろが。暗くなってきたし」
「ゲリはどうすんの」
「精神力でカバーする」
「そんなとこで精神力つかうなよ」
「で、おまえはどうする」
「おれはやめとくよ」
「ふうん。無理にとはいわないけど、たまには息抜きも必要だぞ」
「おまえの息抜きにつきあっていいメをみたためしがない」
「まいいやどうせここで寝てくんだろ。うまくいったらおまえにもやらしてやるから、ここでまってろよ。ナベんなかにマーボードーフがはいってるから食っていいぞ。まずいけどな」
「マーボー? おまえゲリじぁなかったの?」
「きのうヒロポンがつくってくれたんだよ。トーフならきっと消化にいいんじぁないかって」
「ほんとかよ。けど、トーフはまだしもマーボは‥」
「うん。またゲリした」
「‥‥」
「さーてと。じあおれはいってくるぞーっ。待っててねー、じあねーっ」
♂
こないだもいったけど、問題はいつだって性欲にある。
おれたちはいつだって欲情してる。
きりんやゾウみたいに欲情の季節がちぁんときまってれば、洞窟にこもって嵐をさけることもできるのに、おれたちときたら、ねんがらねんじう欲情してる。
だからおれたちは嵐をさけることができない。
おれたちというのは、全人類の男のことである。
おれたちはみんないつだって欲情してる。
おれたちは、いつでも準備万端ととのってる。
問題はそこにある。
それでおれたちはみんな破滅する。
沖山も破滅した。
これは、なぜあいつが二浪することになったのか、という話である。
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