[2000年4月19日] 歯が痛い
菓子パン。(朝)
コロッケ。めし。(昼)
焼き魚。うなぎのにたの。たけのこごはん。大根のみそしる。(夕)

歯が痛い。みぎのしたの奥歯の奥のほうがいたい。いたいいたい書いてるとなんだかほうんとうにいたい。う〜。
五年くらいまえに、ひだりしたの奥のほうの歯が突如いたくなって、このときはもう耐えきれないほどいたくて、二時間くらいは冷や汗をながしながらじいっと耐えてたんだけど、それでもやっぱり耐えきれなくて、近所の歯医者さんにかけこんで「なんとかしてくださいっ」と涙目で訴えたところ、ほんとになんとかしてくれた。ただちにオヤシラズを一本抜いてくれて、それも、三十秒とかからずにスポっという感じで抜いてくれて、そうしたらうそみたいに痛みがきえた。こういうとき人間は素直に「ありがとう」という気もちになる。
そんでそのさい歯医者さんが「ついでに反対側のオヤシラズも抜いときますかあ? どうせいつかは抜くんだから」という。おれはもう感謝の気もちでいっぱいなので、いいっすよもう、いっくらでも抜きますよ、なんならもうぜんぶ抜いてちゃってくださいっていうかるい気もちで、歯医者さんのとってくれたレントゲン写真をみたんだけど、そこにはこんな感じで歯がならんでいた。

おやしらず.gif

さ〜〜〜〜(おれの全身の血の気がひいたオト)。「ほら、ここにあるでしょ、オヤシラズ。これ、抜いときます?」
歯医者さんは笑顔でいうんだけど、どうみたってこれは、抜いてはまずいようにみえる。なんていうか、一家の屋台骨をささえる大黒柱みたいにみえる。
「えと、こっちのオヤシラズも、さっきみたいに簡単に、スポっと抜けるんですかね?」
貧血をこらえながらおそるおそるたずねると、くだんの歯医者はニコニコしながら
「はっはっは。まっさか。これはまあ、ちょっとタイヘンですけどね。でも、どうせいつかは抜くんだし、ね。抜いときます? 抜いとけばあ?」
そんな笑顔で「抜いとけばあ? 抜いとけばあ?」って、おまいは土浦のピンサロ嬢かっ。歯医者にそんなに気安く抜かれてたまるかっ。簡単に抜けるならいいけど、どうみたってこれは簡単には抜けそうにないじゃんかっ。それともおまえは、そうかわかったぞ、たのしんでるなっ。そうかおまえはあれだ、むかしみた食人植物の映画にでてきた、サドの歯医者だなっ。こんなのがほんとにいたらイヤだなあとおもっていたけど、ほんとにここにいるとわっ。
「結構です」
そうおもいあたったおれは0.2秒でキッパリと拒絶した。べつにおれは宇宙飛行士でもなんでもないので、オヤシラズだってモウチョウだってなんだってあったってかまわんのだ。だいたいそういう、いらないからとっちゃえ捨てちゃえっていう考え方が昨今の心寒い犯罪をうみだす一因となっているのだ。いかんいかんいかん。いかんよそれはぜったいにいかん。とかなんとかつぶやきながら家に帰ってきたんだけど、それいらい、こっち側の歯が痛くなるともう、こわくってしょうがない。じっさい、ときどきいたくなることがあったんだけど、いままでは、たとえるなら、軽くドアをノックする程度の痛みだった。でも現在のは、ノブに手をかけてガチャガチャされてるとこまできてる。そのうちオノでドアをぶちやぶってニタ〜とわらうジャックニコルソン状態がくるのかもしれん。こわい。こわすぎる。いちおう、コト切れる直前までは耐えるつもりでいるけど、でもほんとにコト切れちゃったらどうしよう。これで死んじゃったらまずいよなあ。なにがまずいって、川のもくじの作文の、あれが絶筆ってことになっちゃったりするんだ。いくらなんでもそれはあんまりだ。パンツに手をのばしたままで死ぬというのは、いくらなんでもあんまりだ。
うう。とりあえずフトンかぶって現実逃避します。おやすみなさい。

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