とり  わたしが王子様になった日

 たしかにずいぶんむかしのことなのだが、東京ディズニーランドなる地をフラフラしていると、白雪姫がテーマになっている建物が目について、女の子とふたりでゴンドラにのりこんだ。
 ここのノリモノというのは、基本的に、その物語の内容にしたがって強制的につきすすんでいくことになっている。主人公がだれかのわるだくみでひどい目にあうも、おしまいにはわるものをこらしめてしあわせになりましたとさ、といういつものありがたいパターンにあわせて、いくつかの場面を乗客が見物していく。たぶんそういうことになってる。
 ところがこのときの白雪姫のばあいは、ちょっとばかり勝手がちがった。どうちがうかというと、ハッピーエンドに到達することなく、物語のとちゅうでおわってしまうのだ。白雪姫が毒リンゴをたべて、さあこれから、というところでとつぜんあたりが明るくなり、われわれの乗り込んだゴンドラは終着点に着いてしまった。おれのとなりの彼女は「あれ?」という表情である。おれだってもちろんこんなのぜんぜん不満足である。
 係の女の子がおれたちのところにちかづいてきて、お足元にご注意してお降りになってください、とかなんとかいっている。
「これで終わりなんですか? 王子様はでてこないんですか?」
 なっとくのいかない彼女が係の女の子にたずねた。すると女の子はたじろぎもせず、
「王子様はここにいるじゃないですか。」
とこたえててのひらでおれをしめし、にっこりとほほえんだ。
 彼女あぜん。
 おれはさらにあぜん。
 ふたりしてばかみたいにくちをあけて女の子をながめた。女の子は堂々としたもので、にこにこと王子様にほほえみかけている。
 そういうわけなので東京ディズニーランドというのは、あれはあれでなかなかあなどれないところだとかんがえている。

[09,01,2000]