とり  わたしをディスコへつれてって

なにしろイバラキのイナカでたんぼに囲まれて暮らしてるもんで、おまけにテレビラジオ週刊誌のるいにもあまりかかわりがないし、さらにどしがたいタイマンな根性のせいでよのなかの動向というものにまったく興味がないもんだから、「クラブ」というのにも行ったことがなくて、なさけないったらありゃしないんだけど、ともかく、そのクラブにかよう女の子の話をきいて、なつかしくおもいだしたことがあるんだ。じつをいうと、クラブというのがどんなところなのかはサッパリしらないんだけど、想像はつく気がするんだ。内装とか、かかっている音楽とか、そういうのはわからないんだけど、そこに集まってくる女の子たちがどういう表情で踊っているかとかね、どういうわらいかたをするかとかね、そういうのはわかる気がするんだな。それから、そこにかよいつづけてる男の子たちが、どんな気もちがしてるかもわかる気がする。たぶんわかるとおもう。けっきょくはみんな寂しいから通ってるんだみたいないいかたもできるかもしれないけど、でもおれ、そうじゃないと思うんだな。そうじゃなくてね、わかりやすくひとことでいっちゃうとね、みんなスケベ心で通ってるんだよ。おれはそう思うな。わりと自信もある。そりゃそのほかにも、おもしろいとか楽しいとかわくわくするとかいろいろ要素はあるだろうけどさ、基本はスケベ心なんだよ。おれはそう思うな。だってさ、十代後半くらいの男の子ってのは、チンポコのドレイになっちゃうやつっていうのがけっこういてさ、まあおれなんかも正直いってそうだったんだけど、ていうかいまでもチンポコのドレイみたいなもんだけど、そういう男の子はもう、チンポコがさした方向にしかすすめないのね。方向指示器っていうかさ、そういうもんになっちゃってるわけ、チンポコがさ。おれは十九のころね、歌舞伎町のディスコに通ってたことがあって、そのころはおれはディスコにはいると、いつもこうおもってたの。「こ〜りゃ夢のようだなあ」。そうおもってたの。だってさほら、くどいみたいだけどおれはイバラキのイナカでたんぼに囲まれて暮らしてたもんで、夜なんかあれだよ、街灯がないもんだから、缶ジュースを買いにでかけるにも懐中デンキをもってでかけてたんだよ、そんで田んぼ道を照らすとそこらじうにカエルなんかがいてさ、ゲロゲロ鳴いてんの、そういう夜しかしらなかったもんだからさ、夜の歌舞伎町にはじめて足をふみいれたときは絶句してぽかんとくちをあけて道にたちすくみ、あたりのネオンを眺めてたもんだよ。そんで本気で「こ〜りゃ夢のようだ」とおもったもんだよ。まあだいたい歌舞伎町というのはオトナの性欲というか、スケベごころがつくりだした町なわけで、視界いっぱいにもうネオンが赤橙黄緑青藍紫いろとりどりにチカチカチカチカまたたいてそのあかりに照らされてなんだかあやしげな地下いりぐち階段には「3000円ポッキリ」だのという国語の偏差値がひくそうなキャッチコピーの看板があってとうぜんそこにはチクビまるだしの女の子の写真なんかがはってあったりしてさ、それがチカチカチカチカチカのネオンに照らされて点滅してて、どこをみわたしてもチカチカチカ点滅してて、その点滅にあわせておれのチンポコもズキズキズキズキズキとボッキしてっちゃったもんだよ。おれってほら、基本的に純情っていうか、ウブだからさ、そんなふうに刺激を与えられるとイチコロなんだよ。とくにおれのチンポコね。ウブだからさ、イチコロなの、イチコロ。そんでおれはイチコロで歌舞伎町にやられちゃって、ディスコに通ってたのね。ディスコなんていってもだれもなんとも思わないだろうけど、おれは素直にカンメイをうけながら通ってたわけよ。だってほら、音楽はべったんべったんかかってるわ照明はビロビロだわおまけにそこで女の子たちがくねくね踊ってるわみんなして酔っぱらってるわあっちのほうじゃキスして女の子の胸をさわってるやつはいるわ、もうほんと「こりゃ夢だ。夢にちがいない」なんてじぶんのほっぺたもつねりたくなったわけだ。でもね、それだけのことだったら、おれはそこに通ったりはしなかった。じゃなんで通ったかといえば、やっぱり女の子がいたからなんだよね。それも、ただの女の子じゃなくてね、欲情してるっつうか、発情してるっつうか、そういう女の子ね。いや発情してるといっても、まさか昆虫じゃないんだからニオイをだしたりとか交尾のダンスを踊ったりとか、そういうことをするわけじゃないんだけど、でも、そういうのってわかるだろ? ふだん街を歩いてる女の子にはそういうのってあんまり感じないけど、どんな女の子だってときには欲情することがあるわけで、だいたいだれだってあるていどはまわりの環境つうか雰囲気にアテられちゃったりするわけで、おれなんかもろにそうなんだけどさ、だけど音楽デロデロかかって照明ビロビロしてみんなでくねくね踊って酒のんであっちのほうでセックス一歩手前みたいなことしてるやつらがいて、そういう状況に身をさらせば女の子だってけっこうその気になっちゃうよな。それが自然だとも思うし。いや、じっさいの話ね、その気になっちゃってる女の子がいたわけよ。それが目的だったんだよな、おれの場合。そういう女の子たちがいたからおれは通ってた。あと、通えるだけの財力とヒマがあったせいもあるけどね。そのころおれは沖山っていうともだちとなかよくしてて、しばらくまえにその沖山が女の子のモメゴトをだしにしてみしらぬサラリーマンからカツアゲした十万円ていうのがあってさ、それでおれたちはふた月ばかり遊びくらしたんだ。おまけにおれたちは浪人だったからね。このよのなかでだれがいちばんヒマかって、浪人ほどヒマなやつはいないかんね。そうでもないか。ま、ともかくおれたちはヒマをもてあましてて、金もそこそこあって、性欲はじける十九歳のやりたいサカリだったわけで、てっとりばやく女の子を調達できる場所はどこかっつったら、歌舞伎町のディスコだったわけなんだ。ディスコっていってもいろいろあってさ、ちゃんと踊りを目的とした客のためにファンクをかけてるところもあれば、踊りなんかどうでもいい軟弱なチンポコ男のとオマンコ女の社交場になっちゃってるところもあるわけだけど、もちろんおれが通ってたのは軟弱社交場のほうなんだけど、いろいろバカな話があってさ。おもいだしたらノドかわいちゃったんで、フロはいってビールのんでつづきを話すよ。

[16,01,2000]