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先日千葉そごうの地下食品売り場を女の子とふたりで散歩していたら、韓国輸入食品コーナーの試食品に、あれはなんていうんだっけなあ、名前をわすれちゃったんだけど、とにかくある食品がならんでたわけです。韓国風のシオカラなんだけど、そういうおいしいものが韓国食品にあるわけです(われながら無責任なことをかいてるなあ)。それが試食品としてならんでて、おもわずおれは足をとめたんだけど、つれの女の子は気づかずに先にいきつつあったので、彼女を呼んだわけです。
「おうい、これ食べたことある? うまいから食べてごらんよ」というふうに。ところが、たまたまカタワラを通りすぎようとしてた見知らぬおばさんが、おれがいうのをききとめて立ちどまり、すっと手をのばしてそれを口にいれてしまった。たしかにそれはおいしいのだけど、ただし、からい。ただひたすらにからい。一般的な千葉のおばさんの味覚にとってはたぶんからすぎる。そういう食品だったので、あんのじょうというかなんというか、おばさんはそれを口にほうりこんだとたん、しゃきっと背筋をのばして、片手でひたいのあたりをおさえたまま動かなくなってしまった。おれはこわくなって、よっぽどその場から逃げ出そうかとおもったのだけど、それもあんまりなのでおそるおそるようすをうかがっていると、しばらくしてからおばさんはおれをみあげ、「おにいちゃんがおいしいっていうから‥‥」とウラミがましげなメツキでいい、またアタマをおさえた。しかし、そういわれても困る。おばさんにとってはからいだけかもしれないけど、おれにとってはそれはうまいのだ。そもそもおれはおばさんにそれを勧めたわけではなくて、つれの女の子に勧めたのだ。おれはなにひとつ悪いことなんてしていない。いうなればそれは、事故だったのだ。不幸な。ねえおばさん、それが人生ってやつじゃないですか? ‥‥などと地下食品売り場でグダグダいってもしょうがないので、おれはおとなしく「ごめんなさい」と謝った。一部始終をみていた女の子はわらっていて、その夜はなんどもおもいだしわらいをしていた。くやしい。
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