[2000年5月28日] ひらひら
マーボー豆腐。ぎょうざ。めし。(昼)
にぎりめし。きゅうりのぬかづけ。ビール。(夕)

→ブヮボ〜(バブルの意)のまっさかりのころの話なのですが、とつじょフミコさんがヒラヒラのハネハネのセンスをもって帰宅してきました。フミコさんというのはわたしの母親です。これがなにをおもったか、ダイコンだとかサトイモだとかのはいった買い物ブクロといっしょにセンスをもって家に帰ってきました。
「こらなんだ?」
不審におもったわたしがたずねると、
「ジュリアナト〜キョ〜のおみやげ」
とフミコさんはいいます。するとなにか、きみは夕飯のオカズの買い出しにでかけて、ついでに買い物カゴぶらさげたままジュリアナト〜キョ〜でひと踊りしてきたというのか? そのとたん、お姉さんたちにまじってお立ち台で踊るヨワイ五十いくつのフミコさんのすがたというのがおもいうかんで、わたしはいきる希望がおもっきりなくなってってしまいました。
→しかし、どうもなんだか妙な話なので、さらにようく事情聴取をしてみると、フミコさんの職場に新人がはいったんだそうで、その新人というのがいわゆるあのとうじの死語でいうところのイケイケギャルのひとで、そのひとがくれたんだという。どうでもいいけどフミコさんは小学校の給食のおばさんです。フミコさんの職場というのは小学校の給食センターです。イケイケギャルのひとがそういうところで大量のイモの皮をむいたりとかしてるのもどうかとおもうんだけど、あんのじょうおねえさんは職場でとても浮いてて、じっさい、おねえさんが最初に配属された給食センターでは、そこにいたババたちのいじめにあってノイロ〜ゼになって、半年ほど病院に入院してたといういきさつがあって、だからフミコさんたちは、へたにいじめてまた病院送りにしてしまうのもなんなので、やさしくしてあげてるんだそうです。そんで、おねえさんが夜な夜なイモの皮むきのうさをはらしにジュリアナにでかけるもんで、それをきいたフミコさんが「こんどわたしもつれてってもらおうかしら」とこころにもない社交をすると、おねえさんはことのほかよろこんで、それではゼヒごいっしょしましょうということで、ひとまずセンスだけフミコさんにくれて、これでおどりを研究してくるようにといいつかったという。
→これにはわたしもあわてて「ぜったいにいかないでほしい」とフミコさんにたのんだところ、やだね〜ほんとにいくわけないでしょ〜にとフミコさんもやすうけあいしていたのですが、どうも、いちまつの不安がぬぐいきれなくてこわかったでした。またぞろその場のいきおいだけで、イケイケ給食おねえさんひきいるウリャウリャ給食ババ五人衆とかいうかんじでジュリアナにでかけてって、入場審査のおにいさんの制止をものともせずにふりきってお立ち台にのぼるフミコさんを想像するのは、それはあまりにせつない気もちがしたのでございました。よくあのころのテレビなんかで、ディスコのお立ち台でノ〜パンとかでおどってる女の子たちがうつされて「このひとたちの親はどうおもっているんでしょうかね」なんていわれてたけど、わたしのばあい「このひとたちのお子さんたちはどうおもっているんでしょうかね」なんていわれることになりそうで、想像しただけでわたしはもう、塩の柱になってしまって、風にふかれてサラサラサラサラなんてくずれおちそうでした。
→フミコさんはなぜかむかしから、ワカモノ文化というものにひとかどならない関心をもっているらしくて、かってきて読んでる雑誌もハナコとかサイタとかその手のやつだし、ときおりくるいざいたかのようにわかいムスメのするような格好ででかけてゆくときもあるし、いまにもなにかしでかしそうでわたしはこわくって目がはなせません。しかも、それも、あるていどワカモノ文化とゆうものを理解したうえでのことならばいいんですが、そういうわけではぜんぜんなくって、たとえばいぜん「PLAYBOY」とゆう、そです、あのヒュ〜ヘフナ〜の「PLAYBOY」をかってかえってきたことがあるんです。ボブグッチョ〜ネの「PENTHOUSE」をかってかえってきたことだってあります。どうもフミコさんは、誌名がアルファベットになっていて、わかい女の子の表紙になっている雑誌ならば、かってしまうという習性があるらしい。わけもわからないくせに。それでまちがえてPLAYBOYをかってしまって、通勤電車で今月のプレイメイトをひろげてビックリしたそうです。しかし、電車でフミコさんのまわりにいたひとはもっとビックリしたんじゃないかとおもいます。ご同情もうしあげます。うちのモノがとんでもないことをしでかしまして、どうもすいません。しかも、とうの本人はぜんぜん反省したようすもなく「まちがってかっちゃったんだけど、みる?」とわたしにPLAYBOYをくれます。ムスコにPLAYBOYよこす母親がどこにいるかっ。‥いや、みることはみるけど。
→いうまでもありませんが、フミコさんはまったく横文字がダメです。横文字どころか、縦文字もダメです。まえに「給食ババ作文」というのを書かされるハメになって「エモをふかしてホーレンソーをおしたしにしてどうのこうの」とかいう作文を書いてました。そんで、できあがったあと、わたしが推敲させられたのですが、特徴がふたつありました。
1.句読点がない。
2.「い」と「え」が逆である。
というふたつです。とくに2番の特徴は、この近辺のジジババの文章にひろくみられる特徴で、わたしのフミコさんもそでした。しってますか、これ。じっさいにマのあたりにす ると、強烈なんです。「井上さんはエモをふかしてえます」とか書いてあるですよ、おもいきり。それで「ここは『エ』じゃなくて『イ』だろう」とわたしが指摘すると「『イ』って書いてあるじゃないか」と反論されます。わかりますか。フミコさんにとっ ては「え」が「い」なんです。そして「い」が「え」なんです。‥‥などとあまりに非生産的なことをかいてないでいいかげんねます。みなさんおやすみなさい。

→ところでくだんのハネハネのヒラヒラのセンスですが、現在はテレビのうえだとかタンスのスキマだとかのホコリをとるスーパーハボキとしての第二のじんせいをまっとうしています。きみもなかなかタフなじんせいだね。

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