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カモ鍋大会というのをやらかしたことがある。ほんというと大会でもなんでもないんだけど、どういうわけかこういうばあいは大会をおしりにくっつけることになっていて、そんなわけでカモ鍋大会というのをやらかしたことがある。ところがなにしろあつまってきたのは怪獣みたいな食欲をもった連中ばかりなので、唸り声や怒号のうずまくなか、みるみるうちにカモは食いつくされ、のこるはゴボウだのニンジンだの、それと枯れ木も山のにぎわいだとばかりに大量にしいれておいたニワトリの肉ばかりとなった。
そこへ葱野原(仮名)くんがおくれてあらわれた。われわれは、これがカモだといつわってニワトリをシルにひたし、葱野原に食わせた。たしかに鳥類にはちがいない。シルにはカモの味もしみこんでいる。葱野原はナミダをながさんばかりによろこんで「うまいうまい」とこのカモ風味のニワトリをおおいに食った。そのうち「カモとはこんなにうまいものか」とまでいいだすしまつである。
はじめはそのようすをよろこんでみていたおれたちだったのだが、葱野原があまりに無邪気にうまがるので、だんだんこの葱があわれにおもえてきた。
おれたちのようすがおかしいことに葱も気づいたらしい。あたりをうかがうような、うたがわしげな目つきになってきて、おしまいには「これはほんとうにカモか」ときく。
そこでいあわせたやつが間髪をいれずにこたえていわく、
「じつはサギなんだ」
以上が「葱野原サギ鍋事件」のてんまつである。
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