|
→やあみんな元気かい。おれがぽいうだ。寒い日がつづくけど、おれは上々の気ぶんだ。みんなにもわけてあげたいくらいさ。だからすこし話をするよ。なにか素敵な話をするよ。フライパンじいさんの話だ。
→うん、こないだちょっと知ってる女の子にフライパンじいさんの話を聞いたんだけどね、それ以来、なんだかおれ、おちつかないんだ。しってるかい、フライパンじいさんの話。なかなかいい話だったから、みんなにも聞かせてやるよ。むかしむかしあるところに(素敵な話はたいていこのようにはじまる)、フライパンのじいさんがいたんだけどね、毎日毎日卵を焼いてたんだけどさ、じいさんは卵を焼くのがすきだったから、まあ充足した日々を過ごしてたわけだ。ところがある日、じいさんはお払い箱になっちまうんだな。それまでじいさんをつかっていた奥さんが、あたらしいフライパンを買ってきちゃうんだ。それで引退させられたじいさんは退屈に嫌気がさして旅にでる。卵を求めてね。じいさんは旅のとちゅうでいろんな卵にであった。カラスの卵やダチョウの卵やウミガメの卵、じいさんはそいつらを焼きたがるんだけど、親ガラスや親ダチョウや親ウミガメはもちろんそれを焼かせてくれない。なんどもひどい目にあいながら、それでもじいさんは希望をすてずに旅をつづけて、とうとう安住の地をみつけるんだ。どこだとおもう? 南海の孤島の高い木のてっぺんの、鳥の巣さ。どういうわけかじいさんは、鳥の巣にされちゃうんだ。木の枝にひっかかったフライパンじいさんのうえで鳥が卵をうみ、それをかえそうとする。卵をあたためながらじいさんは、すごくしあわせな気ぶんになりました。というところでこの話はおわる。どうだい、いい話だったろう? 気にいってくれただろう? おれがこの話のすきなところはだ、まず、フライパンがじいさんだってところだな。ばあさんや小僧じゃしまらない。フライパンはじいさんじゃなけりゃね。それに、卵を求めて旅にでるってところもいいな。豚の肝臓なんかじゃ気味がわるいからな。カラスやダチョウやウミガメの卵を選んだあたりにも、センスを感じる。まったく、文句のつけようがない、最高の趣味だ。おしまいのところがまたいいだろ? 「卵を暖めながらじいさんは、すごくしあわせな気ぶんになりました」。うん、いい話だ。でも、おれがこの話でいちばん気にいってるところは、彼女が話してくれたってところなんだ。最初にいっただろ? ちょっとしってる女の子に電話でフライパンじいさんの話を聞いたんだって。うん、正直にいうよ、たぶん、彼女に聞かせてもらったから、フライパンじいさんの話はおれにとって、とてもいい話に聞こえたのさ。
→今日の話はこれでおしまい。じゃあ曲にしよう。こいつで元気をだして、この季節をのりきってくれ。デビッドリンドレーとエルラーヨXで、マーキュリー・ブルーズ。
|