[2001年01月20日] 脱輪妊婦
ハンバーグとかきふらいの定食(ひる)
たいへんからい各種カレー。ビール(ばん)

 きょうの午後、クルマにのって外出しようとしたとたん、家のまえのハタケ道で、前輪の片側を側溝におとしてにっちもさっちもいかなくなっている軽自動車にでくわした。反対側には大型の四駆がとまっている。どうやらすれちがおうとして、軽自動車がおちてしまったらしい。やれやれ。クルマをとめて現場にちかづくと、妊婦さんがいて、ごめんなさいごめんなさいとあやまる。ずいぶんおなかがおおきくて、ゆびでつついたらいまにも産まれそうだ。道のさきには婦人科の医院がある。脱輪した軽自動車を運転していたのがこのしきりにあやまる妊婦さんで、そこへいこうとしてたんだろう。おちたタイヤのところでは若いおにいちゃんと毛糸の帽子をかぶったおじちゃんがいて、タイヤにかおをちかづけてふたりでなやんでいる。かたわらには自転車がとめてある。たぶん四駆にのっていたのがおにいちゃんで、自転車は毛糸のおじちゃんだろう。人間が三人いればたいていのことはなんとかなるものだけど、妊婦さんはさすがにこういう場面にはむいていない。でも、そこにおれがくわわればなんとかなる。とりあえずおにいちゃんとおれで溝におちたタイヤのところをもちあげて、おじちゃんがそのしたに丸太をはさんだ。あたりのハタケにはみじかい丸太がいくつもころがっている。そのうちのひとつをはさんで、それからおじちゃんが自転車にまたがり、タイヤのしたにしく板を調達するために家にむかった。おじちゃんをまつあいだ、妊婦さんがまたあやまりだしたのでかえっておれもいづらくなって、「そんなことより、産まれそうじゃありませんか? だいじょうぶですか?」ときいてみた。ふつう、陣痛というのはこういうときにはじまるものである。テレビなんかをみてると、たいていそういうことになっている。それでおれもきいたのだが、妊婦さんはおどろいて、それからこえをあげてわらいだした。わらいながら、くるしそうに、まだもうちょっとだいじょうぶです、といった。そんなはずはない、きっといますぐ陣痛がはじまってうまれるのだ、とおれはこころのなかでおもい、そのばあいはどうするんだろう、赤ん坊のとりあげかたなんてだれにもおそわってないよ、こまったことになったな、ああでもすぐさきに婦人科があるんだからあそこにつれてきゃいいんだ、とかなんとかかんがえているうちにおじちゃんが、厚さといい、はばといい、まるでこのためにあつらえたみたいにぴったりの板をもってもどってきた。もういちどおにいちゃんとおれでクルマをもちあげて、おじちゃんが板を丸太とタイヤのあいだにはさむと、ぶじにクルマは脱出できた。男たち三人は達成感をむねにほほえみあい、妊婦さんは男たちにおれいをいい、そしておじちゃんは山へしばかりに、おにいちゃんは川へ洗濯に、妊婦さんは婦人科へ子供をうみに、みんなそれぞれの目的地をめざしてその場をあとにしましたとさ。

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