[2001年03月18日] 祈祷
やきにく。めし(ひる)
焼き魚。サラダ。タコ。めし(ばん)

→ったいおれはくたばるまでにどれほど射精するのか。ヒマでヒマでどうしようもない十代の、休日のひるさがりなんかにそんなことをかんがえた経験のあるやつがきっといるはずだとおもう。じっさいおれもかんがえた。おれのチンポコときたらどれくらい射精すれば気がすむんだろう? だまりこんでくれるんだろう? この件にかんして学生のころ、ともだちがこんなビロウな歌をつくって歌っていたのをおもいだす。
「何本の大便が通過すれば僕の肛門期は終わるんだろう? いくつのバギナを通過すれば僕のペニスはおとなしくなるんだろう? 友よ、そのこたえは風に、風に吹かれている」
→ほんとうにそのこたえが風に吹かれているかはしらないが、射精量については、おおよその見当をつけることはできる。おれのこのかわいらしいポコチンが、運よくその機能を果たし終えるまで射精できたとして、いっかいぶんの精液の平均に予想される一生の射精回数をかければ、おおよその値を算出することはできる。バケツ一杯。だいたいそんなものだろうとおもう。歯を磨いてヒゲをあたるには十分な量だが、風呂をわかすにはまるで足りないってところだ。あるいはおれたちのなかには一回の射精でコップになみなみと吐きだしちゃうようなすごいやつがどこかにいるのかもしれない。そういうやつなら一生をかけなくたって風呂桶くらいはぱんぱんにみたしちゃうんだろうけど、まあおれには風呂は無理だな。風呂は。
→ところでそれではたとえばバケツ一杯のなかの精子をぜんぶつなげてみたらどれくらいのながさになるんだろう。ヒマなときというのはいろいろとくだらないことをおもいつく。次から次へと疑問はつきない。パケツ一杯ぶんの精子をぜんぶつなげたら、イバラギのおれの部屋からどこまで届くんだろう。となりのまちへはいけるんだろうか。川をこえてとなりのチバ県までいけたりしちゃうんだろうか。でもまさか富士山は無理だよな。ところが海のむこうまでいけたりして。いやいやそれどころかもしかしたら南極点まで到達したりするかもしれん。‥‥アムンゼン隊はどこだ?
→ほんと疑問はつきないけれど、さすがにそこまではバカらしくて計算する気なんておきない。それで結局フンとか鼻をならしてエロ本をひろげ、南極探検をはじめたりするってわけなんだ。それいけやれいけ。
→ひと仕事を終えてボーとしたアタマでまたくだらないことをかんがえはじめる。おれはなににむかってそれほどの精液をぶちまけるんだろう。いや待てこれはくだらないことなんかじゃないぞ。重大な問題だ。ううむとうなって腕ぐみ悩んでみるけど、こいつばかりはおいそれと予想できるものじゃない。そもそもナマミの女にだけバケツ一杯もぶちまけるとはかぎらない。射精というのは、その瞬間におれたちがあたまのなかにおもいえがいているのは、それは女だとは限らないから話はややこしい。
→じっさいおれたちのご先祖さまたちは、形而上下をとわず、ありとあらゆる存在に精液をふりそそぎつづけてきた。たとえば南極に。あるいは赤道に。海原に。山脈に。大地に。草原に。森林に。星空に。窓に。壁穴に。絵画に。文字に。彫像に。数式に。旋律に。調和に。混沌に。暗闇に。光に。夜に。朝に。洗面器に。歯ブラシに。靴に。下駄箱に。制服に。名札に。椅子に。体育館に。鉄棒に。鏡に。縄に。ろうそくに。鎖に。ナイフに。銃弾に。車輪に。戦車に。砲弾に。包帯に。血に。肉に。骨に。筋に。失望に。希望に。資本主義に。共産主義に。十字架に。信仰に。罪に。告白に。記憶に。言葉に。羞恥に。視線に。そしてもしかしたら、それらのすべてにこたえてくれるなにかに。風に吹かれているなにかに。
→やがてご先祖さまたちの途方もないくるおしい想像力とあてもなくヘロヘロと泳ぎつづけた数かぎりない精子たちにおもいはおよび、しだいにおれは敬虔な気もちにさせられてしまった。射精しつづけたご先祖さまたちのために、かれらの吐きだした大量の精液のために、ここですこしだけ祈らせてくれ。

神が御霊をわたしたちに賜わったことによって、わたしたちが神におり、神がわたしたちにいますことを知る。アアメン。

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