[2001年09月02日] 「椅子」
たんめん(ひる)
てんぷら。あつあげ。めし(ゆう)

→大学のサークルでいっしょになった同級生のなかに、「病気」というあだなの女の子がいた。かんがえてみるとちょっとひどいけど、そのあだなはあまりにもぴったりだった。繊細とか、はかなげとか、白血病とか、そんなイメージのやつだった。病気には相棒がいて、オナコとよばれてたんだけど、そっちは病気とは対照的な、元気な女の子だった。彼女たちはいいコンビで、病気がベースでオナコがギター、ふたりとも歌がうまくて、そのうち彼女たちのバンドはうまくいきはじめた。じっさい彼女たちのバンドは、いいバンドだったとおもう。そして、おれがいいとおもうバンドがたいていそうであるみたいに、彼女たちのバンドはあまりうれなかった。そもそも本人たちに、うれようとする意志があったかどうかはかなりあやしいところだった。しかし、うれはしなかったが、息のながいバンドになった。ひとことでいって、彼女たちはストイックだった。そのストイシズムがたぶん、彼女たちを息のながいバンドにした。彼女たちはけして女であることを強調しようとはしなかった。女の子のバンドというのはそのころにだってたくさんあって、肩をみせたり、足をみせたり、そういうのはたくさんあって、もちろんおれはきらいじゃないんだけど、でも、音楽にはそれは関係がない。彼女たちはいつだって音楽だけだった。その姿勢はなかなかいさぎよくて、かっこよくみえた。
→おれたちが大学三年生のときの夏に、病気がほんとうに病気になって、入院をすることになった。たいせつなライブがあって、病気のかわりにでてくれと、オナコがおれのところにきた。おやすいごようだった。空がたかくなりはじめる季節だった。おれは彼女たちの曲をおぼえ、夏休みのおわりのがらんとした大学の教室で、ティアックの4チャンネルのMTRで、オナコとふたり、デモテープを録音した。「椅子」という曲があって、とくにおれはそれがすきで、それを録音することにした。ことしも空がたかくなる季節になろうとしている。そして、空がたかくなると、彼女たちのCDをひっぱりだしてきて「椅子」をきく。

歓喜

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