[2001年10月11日] J
ピーナッツバターの菓子パン(あさ)
なぞの定食(ひる)
うどん(ゆう)

「会えばわかると思うけどね。」
とおねえさんはいった。おれがネションベンをもらした旅行中でのことだ。おねえさんはそもそもは在日の韓国人で、二十代のなかばからアメリカで暮らしていた。「Jは珍しいひとなの。どう珍しいかというと、そうねえ、アメリカ人にはいないタイプよねえ、一言でいうと日本人の男の子みたいなのよ。会えばわかると思うけど。」

「僕の恋の話を聞いてくれよ。」
とJはいった。彼はベッドのうえに腰をおろしていた。天井では扇風機の羽根がゆっくりと空気をかきまわしていた。静かな夜ふけだった。「僕はいま、とてもつらい恋をしているんだ。彼女は大人で、素晴らしく魅力的な女性だ。僕は正直に彼女に打ち明けたよ、愛しているって。でも、彼女は僕の気持ちがわかっているのに、僕をからかっているんだ。彼女が僕にどんな仕打をしたと思う? 僕を運転手がわりに使ったり、夕食をおごらせたり、もちろん僕は彼女に会えれば嬉しいから、どんなことだってするさ。でもね、僕の友人とドライブへでかけたり、だれかからもらった指輪を見せびらかしたり、そういうことを平気でするんだよ。もう、彼女には振り回されっぱなしなんだ。」

「やれやれ。」
とおれは思った。つまりこれが、アメリカ人にはいないタイプの、一言でいうと日本人の男の子みたいな男か。やれやれ。

「どうすれば彼女が僕に興味を示してくれるのか、僕にはわからない。ときどき僕は、彼女を忘れようともしてみる。だけど駄目なんだよ。一人でじっとしていても、考えるのは彼女のことばかり。どうしようもないんだ。いつも心のどこかで電話をベルを待ち続けている。苦しくて仕方ないんだ。思うんだけど、僕には恋人が必要なんだ。僕を魂で愛してくれる女性が必要なんだ。それが彼女だったなら、どんなに素敵だろう。だけど、どうすればいいのか僕にはわからない。わからないんだよ。」

"I've been run down,Lord,I've been lied to..."
なにかをこたえるかわりに、ためしにおれはそう歌ってみた。考えるのがめんどうくさかったからだ。そもそもそんなことはおれの知ったことじゃない。聞きたくもないことだった。
"And I don't know why let that woman make me out a fool..."
Jも一緒に唄いはじめた。おしまいまで歌いおえてから、「これ、だれの歌だっけ?」とJがきいた。「オールマン・ブラザーズ・バンド。」とおれがこたえた。

「イライラするのよ。」
とお姉さんはいっていた。「イライラするんだけど、つい面倒をみてあげてしまうわけ。かまってあげたくなってしまうのね。そういう男の子っているでしょう? いつもそんなふうに誰かから面倒をみてもらえているから、Jも自立できずにいるのね。日本の男の子にとても似ていると思うわ。」

すまん、きょうの話にオチはない。まあたまにはこういうのもじんせいであろうが。ぽいうぽいう。

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