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イタリアサッカーはじんるいの宝である。この宝物をアジアのくにがやぶってしまったことによって、げんざい世界は混乱し、苦悩している。この事態をどううけとめたらよいのか。世界は、とくにヨーロッパはいま、この事実をうけいれるためのよくできたストーリーを構築しようと躍起になっている。あるいは模索している、というべきか。模索しているのはたぶん、じぶんにとってもっとも都合のよいストーリー。いつの時代も戦後処理というのは厄介だ。にんげんの欲望が如実にあらわれるのは、もしかしたら、戦っているさいちゅうではなく、戦いがおわって、かちまけがはっきりしたそのときなのかもしれない。どんなにんげんにも現実と折り合いをつけなければならないときがある。それは、戦いがおわって、結果のはっきりした、そのときだからだなどといったおおげさな話ではまるでなくて、とつぜん話も口調もぜんぜんかわってしまうんだけども、ようするに小生はいまシンコンなわけであります。うれしはずかし蜜の味。終業ベルとともにすっとんでいえにかえって、くりたさんまいにちまいにちかえるのはやいっすねえといわれてもいやあハハハとかこころここにあらずな愛想わらいをうかべてすっとんでかえってケーキのハコだとかをもって玄関あけてただいまハニ〜、いまかえったよ〜とかなんとか、いやオレはやんないけどな、ぜったいやるわけないけどな、でもとにかくそういう、世間一般的にはそういう、アレなわけである。んが、いっぽう、にもかかわらず、サッカーなわけでもあるわけです。だいたいお祭りをやってるというだけでついフラフラとそっちのほうにあしがむいてってしまうこのしょうぶんなところにもってきてそれがサッカーでしかも自国開催で「券あるよ〜券あるよ〜カテ1最高だよ〜やすくしとくよ〜」とあやしげなこえをみみもとでささやかれてしまったとあっては、いったい小生はこの現実とどう折り合いをつけてやっていけばよいのか。さらにとつぜんですがここまでなにがいいたいのかおそろしくわかりづらい作文をしてるのに気がついたので取り急ぎまとめますと、ようするにサッカーはたのしいと、小生はサッカーがみたいと、しかしヨメさんはそんなのばっかりみてんじゃないと、こういうこまったことになってしまいまして、こころは千々にみだれめしも三食しかノドをとおらず夜は十時間しかねむられないこのありさまなわけです。ギリシア悲劇の主人公のように懊悩し、イタリア敗戦の報にせっしたヨーロッパのように混乱をきたしとるわけです。んでけっきょくどうしたかというと、サッカーみにいきました。けっきょくめのまえにある欲望にはかてず、あとのことはあとでかんがえときゃいいやいまはこの一時の快楽に身をまかせようとサッカー見物にでかけてしまいましたごめんなさい。サッカーはいつだってあるじゃないかときみはいうけれどこれは日本対ロシアだよ、ワールドカップの本番の日本対ロシアなんてもうにどとある試合じゃないよたのむよわかっておくれよといいのこしてでかけてしまったサッカー見物でしたごめんなさい。先々週の日曜日に横浜でおこなわれたその試合は夜の十時半におわって、茨城のアパートにかえったときには一時半ごろになっていました。おそるおそるドアをあけるとそこはくらく寝静まった部屋でした。こっそりと入浴をしてひといきついて、ごそごそとフトンにもぐりこんで小生もねました。よくあさは月曜日で、六時におきてかおをあらって、フト食卓のうえをみやるとそこにはいつもの朝食用のおにぎりがおいてありました。おおっ。これはっ。なんだ、おこっていないんじゃないか。あさごはんを用意しておいてくれるなんて、じつはゆるしてくれてるんじゃないか。なんだよそれならそうとはやくいってくれよ、心配してそんしたよもう。すっかり気ぶんはかるくなって、ついでにあしどりもかるくおにぎりをもってカイシャへむかいました。小生ネザメはいまひとつ食欲がなくて、それであさごはんはカイシャのつくえでたべるようにしているのです。カイシャについて、さっそくおにぎりをたべました。もぐもぐ。ん〜。うまいなあ。もぐもぐ。お茶をひとくち。ごくごく。ふ〜。たまらんなあ。もぐもぐ。お。そろそろまんなかまできたな。具がでてくるな。きょうの具はなにかなあ。もぐも……へ? ええと。なにかフシギなあじがするんだけど。ええと。この具はなんですか? 意表をついたあじわいにおにぎりをしみじみと観察すると、それはサクランボでした。ほどよくしっかりとにぎりこまれた白飯につつまれて鎮座ましましたその具は、サクランボでした。な、なぜこんなものが具に? 小生はしばらくそこでかんがえこんでしまいましたです。もしかしてウメボシとまちがえたのかなあ。たしかににたような季節ににたような花をさかせる樹木の果実だけどなあ、いやでもなあ、ウメボシとサクランボはまちがえねえよなあ。にてるけど。でもまちがえねえよなあ。う〜ん。やっぱりこれは確信犯だよなあ。う〜ん。やっぱりこれは、お、おこってるのかな? お、おこってるみたいだな。う、う〜ん。フシギなあじわいのおにぎりをほおばりつつ、ひとりオフィスでせすじをさむくする一週間のはじまりでしたとさ。ちゃんちゃん。
●余談
よくじつの具はカールでした。
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