[2002年07月18日] たたかえ戦艦ミズモルド

 ぜんぜんどうでもいいんだけど「ヤフオク」というのはなぜかみるたび「ヤオフク」とよんでしまう。もうめんどくさいので、ほんじつただいまより個人的に勝手に「ヤオフク」とよむことにしてよいですか。漢字でかくと「八百福」です。ヤオフク。ひとりこころのなかでそうよぶだけなので、社会的になんら迷惑をかけることもないです。よろしいですよね。じゃあそうさせていただきます。どうもありがとう。というふうにあちこちでじぶんのつごうのいいようになまえをかえちゃって暮らしている筆者である。じっさい、そうでもしないことにはどうにもおぼえられない奇怪な外来語や略語がちまたに無限に流布していて、なんともすみにくいよのなかである。しかもまぎらわしい。たとえばちかごろ迷惑をこうむっているのがUFJ銀行とUSJである。どっちがどっちなのかいつもとっさにでてこない。どっちがどっちだったかをおもいだすときにいちいちくちのなかで「ゆにば〜さるすとぅ〜でぃおじゃぷゎ〜ん」と小声でいってから、だからユーエスジェーっていうのはあっちのことで、ユーエフジェーっていうのが銀行なんだよな、とたしかめている。めんどうくさいことこのうえない。こういうまぎらわしいものこそジャロのほうからヒトコトいってやってほしいものだが、ジャロ自身、「ジャロってなんジャロ」とじぶんについて懐疑的になっているしまつで、ちっともあてにならない。まったくこまったことである。ついでにU関係についてのべておくと、UFOについてはいちどもまよったことはない。なぜかといえばむかしピンクレディーが、アタマから手をにょきっとさせて「ユッフォー」とやってくれたからにほかならない。ああいう印象的なことをしてくれるともう、イヤでもおぼえることができる。じっさいあれによって日本一億国民が一発でUFOというものを記憶してしまったのだからたいしたものである。それは一撃必殺の出来事であった、といってもいい。UFJもUSJも、あれをみならってなにか一撃必殺なことをしてほしいものだとせつにねがうしだいである。
 21世紀の日本国民である筆者でさえこのていたらくなのだから、19世紀から20世紀にかけての、カタカナでつづられる外来語というものがいっぺんに大量に日本国に輸入されてきた時代の日本国民というのはさぞかしたいへんであったろうとおもわれる。たとえば、日露戦争において日本の海軍の兵隊はバルチック艦隊の艦のなまえがおぼえられなくって苦労したんだそうである。しかも仕事は戦争なので、いちいちくちのなかでこごえで「ゆにば〜さるすとぅ〜でぃおじゃぷゎ〜ん」とつぶやいて確認をしてから「敵艦ユーエスジェーをねらえっ」とか命令をくだしていたら、そんな悠長ことをやっていたらあっというまに砲弾をうちこまれて叩きしずめられてしまうわけで、だからおぼえるほうもこれは真剣である。かといって相手はロシアじんなので、ロジェストウエンスキーだのクロパトキンだのとこまったなまえの連中なので、いやもちろんロシアじんはこまらないだろうけど日本じんにとってはこまった連中なので、兵隊さんたちも苦労したらしい。そしてこまりはてたかれらは、あんのじょうというかなんというか、ムリヤリ日本語にあてはめて艦名をおぼえることにしたそうである。たとえば戦艦アリョールは「蟻寄る」といったあんばいにである。そして戦艦三笠の甲板のうえとかで教育係のひとが艦影を描いた画をみせて「クリタっ、この艦はなんであるかっ」「はっ。それは蟻寄るでありますっ」「正解っ」とかやってたらしい。これだけでもすでにいいかげん失礼なところにもってきてなかでもとりわけ失礼なのが戦艦イズムールドで、あろうことかこの艦は「みずもるど」という和名を頂戴してしまったのであった。戦艦みずもるど、すなわち「水漏るど」である。勝てまい。バルチック艦隊といえども水もっちゃってては勝てまい。どうあってもそれでは勝ち目はあるまい戦艦水漏るど。そんな艦を相手にするのだから、これはたたかうまえから気ぶんは勝ったも同然であったであろう日本海軍。日本海海戦といえば日本の歴史的大勝として歴史的にしられた海戦であるが、その勝因として、このような相手をなめきったタイドで、相手をのんでかかっていたこともあげられようというほんじつはしられざる歴史の裏話であった。

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