|
●ハコネに旅行にいくのだが、それについてかんがえているうちになにかこう、えもいわれずこのうえなく幸福な気もちになってしまい、ちょっとだけこの幸福感をかみしめるべくひとり部屋にこもって少年隊の「仮面舞踏会」をかけて踊りくるっていたらニョーボに覗かれて、そしたら怒ってまた相手をしてくれなくなってしまった。旅行の準備もせずになにひとりで踊っているのかと。なんでわたしばかり旅行の準備をしなければならないのかと。そういうことならしい。そんなこといわれもこまる。じぶんだってときどき踊るくせに。お姉さんだっていってたじゃないか。日常生活のなかで無意味にときたま踊るヘキのあるのは家族のなかできみだけだと、お姉さんに指摘されていたじゃないか。
「マチコはときどき踊るわよねえ」
「えっ、わたし? 踊る? 踊らへんよお」
「踊るって。いやほんま。たまあに」
「どんなふうに?」
「なにかこう、じたばたと。手足を。うごめかす?」
「ええ〜? せんよお」
「するって。ほんまに」
というようなことをいわれてたじゃないか。それで、そのころはまだおれはニョーボの踊りはみたことがなかったので「へえ、こいつ踊るのか」とおもっていただけなのだが、しばらくするうちにたしかに踊るのをみるようになった。ふしぎな踊りである。これはなんの踊りなのかとおもっていたが、その後シコクにいって阿波踊りをみて、あ、これがニョーボの踊りの原型か、とおもいあたった。阿波踊りの女踊りをだいぶん緩慢にして、さらにタイ風の踊りも加味し、なおかつもうちょっと動作をおおげさにしたものとおもっていただいてよろしい。でもそもそもこんな話、だれかになにかの影響をおよぼすわけでもないので、どうともおもわないでいただいてもますますよろしい。とにかくさあ。だからさあ。いっしょに踊ろうよ。ハコネ。たのしいじゃん。準備なんていいからさ。踊りましょうよ。トゥナイヤイヤイヤイヤディヤ〜。
|