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●夜、部屋のデンキを消して、ねどこのなかでの配偶者との会話。
「ジブン、高校のころ部活なにやってた?」
「おれ?」
「うん」
「サッカー部」
「えっ?」
「サッカー部」
「えっっ? …………(以後一分くらいえんえんと沈黙。というか、絶句)」
それはあまりに驚きすぎではないですか。あまりに驚くのは失礼というものではないですか。
●夜、部屋のデンキを消して、ねどこのなかでの配偶者との会話その2。
「わたしもやっぱりユメとかキボーとかいったものをいだいていきていかないとだめだとおもうのよねえ」
「ふむふむ。むにゃむにゃ」
「いまからでもおそくないっ。なにかめざそう。いまからわたし、なにになれるかなあ」
「う〜ん。そうだなあ。歌手とか、どう?」
「歌手か〜。え〜な〜。なに歌手がええやろ」
「なに歌手って。そんなのおれ、演歌歌手しかおもいつかんが。ほかにあるのか」
「あるやろ。アイドル歌手とか。ロック歌手とか」
「ああロック歌手か〜。そういうのあるなあ。ロックボーカリストとはひと味ちがう」
「ちゃうでえ、そらもうちゃうでえ」
「きみはロック歌手っていったらだれをおもいうかべる?」
「わたし? わたしは……ハウンドドッグ、とか」
「それ歌手じゃない」
「ジブンはだれをおもいうかべるの」
「もちろん、桑名正博。これしかない」
「ああ、おったおった。わはは」
「セクシャルヴァイオレットだよ? セクシャルヴァイオレットナンバーワンだよ?」
「わはは」
「あのころおれさあ」
「なに?」
「日本の歌の歌詞で、いんちきな英語がでてくるだろ? アイラブユーとかマイスイートハートとか」
「うん」
「ああいうのがなんか許せなくってなあ。きくたびムカムカしてたんだけど」
「ほう」
「セクシャルヴァイオレットナンバーワンをきいて、もう、なんでもよくなっちゃったよ。なんていうか、もう、突き抜けてた。ちっちゃいことにこだわってるじぶんが小さくみえたっていうか。だって、セクシャルヴァイオレットだよ? ナンバーワンだよ? もう、とどめだったね」
「なるほど」
「偉大だよ桑名正博」
「偉大すぎる」
「ありがたい」
「ありがたい」
歴史は夜つくられるなどといいますが、われわれのような凡人は歴史に関与することはこのさきもまったくないかとおもいます。やはり夜はさっさとねるべきだとおもいます。
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